しがぎん経済文化センター

謎解き ニッポンのお寺と仏教 ~知られざる宗教の現場を歩いて~ 講師 鵜飼秀徳 先生

「なぜ“お寺離れ”が起きるのか? 日本人の宗教観の背景に迫る。」

 高齢化にともない人口減少が加速する「多死社会」が今後40年以上続くといわれている現代の日本。葬儀が増えているにもかかわらず、テレビや新聞では墓じまいや散骨、葬送儀礼の簡略化といった話題がたびたび取り上げられ、全国各地で寺は危機的な状況に追いこまれている。なぜそんなことが起きているのだろうか?

 気鋭のジャーナリストとして活発な執筆活動を続けながら、京都嵯峨野にある正覚寺の副住職を務める鵜飼秀徳さんが、寺を取り巻く現状を糸口に、日本の仏教や日本人の宗教観とその背景についてわかりやすく解説する新講座がスタートする。

 「お寺が衰退している理由は、人口減少による地方消滅などの現況だけをみていてもわかりません。お寺はどういう役割をもって誕生し、長い歴史の中でどう変化してきたのか。聖徳太子の時代に仏教の力で国を安定させようとした〝鎮護国家仏教〞として伝来してから、民衆を管理するための檀家制度ができた江戸時代、明治維新の廃仏毀釈などの歴史も含め、お寺についてお話しします」。鵜飼さんが取材した多数の事例をもとに、宗教学だけでなく、歴史学・民俗学・社会学など多角的に日本の仏教を考えていく。

 「日本の仏教はシャーマニズムや儒教などが混じっています。特に重要なのが土着的な信仰のかたち。例えば、都心の一等地で平将門の首塚を避けてビルを建てるのも、祟りを恐れているんです。また、日本人が誰も見ていなくても倫理的行動をとるのは、〝霊性〞という見えざるものを感じているから」 すべてのものに〝霊性〞が宿っているという日本人独特の考え方は仏教だけでは説明できないと鵜飼さん。「針供養や虫塚について掘り下げていくと、人はいったい何に手を合わせているのか、弔いとは何なのかがわかってきます。死について考えることで自ずと生きる意味も見えてくるのです。路傍のお地蔵さんの意味を知るだけで、散歩の仕方もきっと変わってきますよ」


講師プロフィール

宗教ジャーナリスト・正覚寺副住職 鵜飼秀徳 (うかい・ひでのり)

1974年、京都市生まれ。成城大学文芸学部卒業。新聞社社会部記者を経て、日経BP社に移籍。「日経ビジネス」記者「日経おとなのOFF」副編集長などを歴任後、2018年に独立。著書に『寺院消滅』『無葬社会』など。近著に『「霊魂」を探して』。嵯峨・正覚寺副住職、東京農業大学非常勤講師、浄土宗総合研究所嘱託研究員。

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