Walk On vol.47 伝説と歴史の舞台を歩く 楊梅の滝

DATA大津市
  • 歩行距離 約4km
  • 歩行時間 約1時間30分

 涼を求めて足利義輝ゆかりの滝をめぐる

 

JR湖西線の車窓から比良山系の山肌を眺めていると、白い布のような滝が小さく見えるが気づいている人は意外と少ない。楊梅(ようばい)の滝と呼ばれ、雄滝(おだき)、薬研(やけん)の滝、雌滝(めだき)の三段に分かれている。落差の合計が76m、これは県内随一のスケールだ。

室町時代末期、都を追われて近江に逃れていた第13代将軍・足利義輝(よしてる)が当地を訪れた際、この滝を見て「楊梅(やまもも)」と名付けたのが由来だという。流れ落ちる一筋の白い滝が高木(こうぼく)のヤマモモに似ていたのかもしれない。

志賀町に伝わる昔話によると、この滝の主は大蛇の夫婦。雄滝の主はもともと蓬莱山(ほうらいさん)と権現山(ごんげんやま)を結ぶ尾根筋にある小女郎(こじょろう)ヶ池の大蛇で、ある年の干ばつで池の水が涸れかかった時に住処(すみか)を移したのだという。一方、雌滝の主は小女郎ヶ池の伝説(club keibun2013年7月号掲載)で紹介した大蛇に魅入られた女房。残した乳飲み子のために片目をえぐりとって蛇に化身した逸話が残っている。

JR北小松駅から雌滝までは比良げんき村を経由して徒歩約30分で行ける。雌滝の高さは約15mだがその姿は女性のように美しく、渓流の上に設けられたデッキにたたずみ、滝の飛沫(しぶき)を浴びながら涼(りょう)をゆっくり楽しむことができる。

雄滝に近づくには山登りの最低限の準備はしておきたい。登山口から涼峠(すずみとうげ)へ向かう尾根道を登ると、滝見台という展望台から遠くに谷へ一気に流れ落ちる雄滝の姿を確認できる。さらに尾根筋を登り涼峠への分岐から大きく谷に下ると雄滝の滝つぼに出る。水音が激しく、怖さを感じるくらいの大迫力だ。滝めぐりのアプローチには十分の注意を払いたい。

 

 

参考資料

「志賀町むかし話」(志賀町教育委員会編/サンブライト出版/1985年)

「近江の滝」(水田有夏志著/サンライズ出版/2010年)