Walk On vol.46 伝説と歴史の舞台を歩く 酒波

DATA高島市
  • 歩行距離 約3km
  • 歩行時間 約1時間

大蛇退治伝承の地から古道近江坂をゆく

 

出雲の八岐大蛇(やまたのおろち)の異伝として、大蛇退治の伝承が各地に残っている。高島市の観光情報では「昔、村人を困らせる大蛇が棲(す)んでおり、酒を呑ませて退治したことから、この地を酒波(さなみ)と呼ぶようになった」と記している。

今津町酒波の里に鎮座する日置(ひおき)神社の縁起にも詳しい。垂仁(すいにん)天皇の時代、素戔嗚尊(すさのおのみこと)と稲田姫命(いなだひめのみこと)が現れて大蛇を退治し、胴体を真っ二つに切断。尾から得た剣を投げ放ち、留まった里に岩剣(いわつるぎ)の神を祀ったのが、この神社のはじまりだと伝えている。

福井県境の山を越えた若狭の闇見(くらみ)神社にも同様の伝承がある。二つに切断された大蛇の胴体の半分が若狭に落ち(片方は美濃に)、その蛇体を祀ったのが闇見神社だという。日置神社のある川上荘(かわかみのしょう)と闇見神社のある倉見荘(くらみのしょう)は古くから深い縁(えにし)があり、祭礼の際は、険しい山を越えて、お供えや神事用の馬を運んだと伝えられている。

人馬が往来したこの古道は「近江坂」と呼ばれ、山の尾根に今もそのルートが刻まれている。古刹・酒波寺(さなみでら)を起点に山麓に広がるいこいの花の森(県民花の森)を散策し、展望のいい休憩所「風林亭」まで歩いてみよう。長大な近江坂のほんの一部だが、往時の旅人の気分を体感できるだろう。

春の酒波寺はエドヒガンザクラやソメイヨシノが咲き誇り、秋にはもみじ池の水面に映る紅葉が美しい。伝説に彩られた山里で、四季折々の風景を愛(め)でることができる。

 

参考資料

「角川日本地名大辞典25:滋賀県」(角川書店/1979年)

「日本歴史地名大系25:滋賀県の地名」(平凡社/1991年)

「滋賀県神社誌」(滋賀県神社庁/1987年)

「式内社調査報告第十二巻:東山道1-近江国」(皇學館大学出版部/1981年)

「森の神々と民俗」金田久璋著(白水社/1998年)