Walk On vol.50 伝説と歴史の舞台を歩く 岩根

DATA湖南市
  • 歩行距離 約2.5km
  • 歩行時間 約45分

百伝池(ももつてのいけ)の伝説と桓武(かんむ)天皇の病を癒やした霊水

 

環境省の湧水保全ポータルサイトにある「滋賀県の代表的な湧水」のひとつに、湖南市の「善水元水(ぜんすいもとみず)」がある。これは湖南三山の古刹、岩根山善水寺(ぜんすいじ)の境内にある水汲み場の湧水のことで、寺の縁起と深く関わっている。

比叡山延暦寺を開創した伝教大師・最澄(さいちょう)は、堂舎建立の用材を甲賀の地に求め、伐(き)り出した材木を筏(いかだ)にして野洲川(旧横田川)に流そうとした。しかし水量が少なく、雨乞いの祈祷のための場所を探したところ、岩根山の中腹より一筋の光が目に射し込んだ。その光に誘われ山に登ると、「百伝池(ももつてのいけ)」と呼ばれる池を発見。この池の中から金の薬師仏が現れ、大師がこの霊仏を本尊として祈祷すると、なんと大雨が一昼夜降り続き、件(くだん)の材木は川を下って琵琶湖の対岸(比叡山の麓)に着いた。

またその後、京の都の桓武(かんむ)天皇が病に臥(ふ)せた時に、大師がこの池の水を元水として薬師仏の前で病気平癒を祈念し、その霊水を献上。天皇がたちまち快癒したことから「医王善逝(いおうぜんぜい※)の御香水(おこうずい)」と称され、その縁によって「善水寺」の寺号を賜ったという。

このエピソードの「百伝池」は今も本堂(国宝)の前で満々と水を湛え、樹木を配した石組みの美しい庭園をかたちづくっている。紅葉のシーズンはまた格別の趣があり、多くの参拝客が訪れる。

善水寺の観音堂までは、岩根バス停を起点に西登山口、南登山口からアプローチする二つの参道があり、ハイキング気分で登ることができる。入山料を納め、境内に入ると客殿風の荘厳な本堂はすぐ目の前。堂内で天平から鎌倉時代にかけての貴重な仏像を拝観したら、本堂西側から伝教大師ゆかりの旧跡をめぐる「雨乞いの道」を歩いてみるのもいいだろう。境内をゆっくり散策し、滔々(とうとう)と流れ出る湧き水で喉を潤せば、心身が癒やされる気分だ。

 

 

※薬師如来のこと。薬師如来の前で医王善逝の秘法にて祈願したことに由来する。