Walk On vol.48 伝説と歴史の舞台を歩く 瓦屋寺(かわらやじ)

DATA東近江市
  • 歩行距離 約4.5km
  • 歩行時間 約1時間30分

四天王寺建立の瓦の謎と太子伝説を訪ねて

 

聖徳太子にゆかりのある寺院や仏像は近畿一円に多く点在している。伝説化されたさまざまな逸話にふれるたびに、民間に広がった太子信仰の奥深さを知らされる。

東近江市の箕作山(みつくりやま)中腹にある瓦屋寺(現在は臨済宗妙心寺派の瓦屋禅寺)もそのひとつだ。聖徳太子が四天王寺(大阪市)を建立する際、この山麓の土を用いて大量の瓦を焼かせたという伝説があり、その跡地に太子が寺を開基したという。これが寺名の由来になっている。

この寺を訪れた随筆家・白洲正子は著書『近江山河抄』の中でこの伝説にふれ、四天王寺建立に協力した秦氏(はたうじ)の存在をあげている。秦氏は朝鮮半島の百済(くだら)から渡来した技術者集団で、この寺は瓦を焼いた渡来人の菩提寺が始まりとも考えられている。参道の登り口付近には白鳳時代の瓦の窯跡も残っている。

現在では林道を利用して車で参拝する人が多いが、麓からまっすぐにのびる古い参道の苔(こけ)むした石段も趣(おもむき)があっていい。ただし、急登の石段は1,200段以上もあり、途中で何度も息があがってしまう。たまらず石に腰を下ろして休んだところ、近くに「聖徳太子御腰掛石」と彫られた石碑があった。太子もこのあたりで一息ついたのだろうかと想像するとおもしろい。

息を切らしてようやく石段を登りきると、そこは木々の緑に囲まれた美しい境内だ。閑寂(かんじゃく)とした風情で心を和ませてくれる。紅葉の季節はまた格別の彩りで参拝者の目を楽しませてくれるだろう。葭(よし)葺きの本堂には秘仏の千手千眼観世音菩薩立像が安置されている。金色慈母大観音像がそびえる展望台に立ち、“蒲生野(がもうの)”と呼ばれる湖東平野を眺めれば気分も爽快だ。

帰りは林道をたどり、延命公園を通って近江鉄道の八日市駅へ。時間に余裕があれば太郎坊宮(たろうぼうぐう)を参拝するのもいいだろう。