しがぎん経済文化センター

奈良時代への旅 講師 西山 厚 先生

「奈良時代は日本の青春時代!?時を越えて想像することが大切」

奈良時代は、天皇を中心とした国家体制を確立させるなど、新しい国づくりに積極的に取り組んだ時代。学生や僧を唐へ留学させて大陸の文明を導入し、仏教文化が華開いた時代でもある。


 


「国づくりに関わった人たちは、みんな一生懸命でした。天災が起き、疫病の流行もあって、迷い悩み傷つくことも多かったのですが、ひたむきに理想を追い求めた時代でした。苦しい時代ではあったけれど、振り返ったときに、とても美しく輝いている時代。だから私は、奈良時代を日本の〈青春時代〉と呼んでいます」と話すのは、30年にわたり奈良国立博物館の研究員として奈良と仏教の魅力を伝え、この春から帝塚山大学文学部文化創造学科の教授に就任した西山厚さん。秋から始まる草津会場の新講座「奈良時代への旅」で講師を務める。


 


「歴史を学ぶときにもっとも大事なのは、他人事にしないということです。歴史上の人物の苦しみや悲しみや喜びに思いをはせる。そうしないと大切なことが見えてきません」


 


例えば、東大寺の大仏は日本人の誰もが知っている奈良のシンボルである。しかし、聖武(しょうむ)天皇がどのような思いの果てに、なぜ大仏を造ろうと決意したのか、それを正確に知っている人はきわめて少ない。


 


「聖武天皇が大仏を造ろうと決意した理由、それは〈すべての動物とすべての植物がともに栄える世の中を作りたい〉ということでした。でもそんな世の中って本当にあるのでしょうか。聖武天皇はあの大きな大仏を〈大きな力で造るな、たくさんの富で造るな〉と言いました。大きな力やたくさんの富こそ必要だと思えるのに。聖武天皇がそういう考えになったのにはわけがありました。そのわけを知らなければ、大仏を知っているとは言えません」


 


講座では、聖武天皇が大仏に込めた願いや、大仏開眼(かいげん)(大仏に魂を入れる儀式)の導師をつとめたインドからの渡来僧・菩提僊那(ぼだいせんな)、聖武天皇の遺愛品(これが正倉院宝物(ほうもつ))を大仏に献納した光明皇后、苦難の末に日本に至って唐招提寺を創建した鑑真和上(がんじんわじょう)などの人物に焦点を当てながら、これらの人々が、どんなことを思いながらどんな人生を送ったのかを考えていく。そのためには、想像力を働かすことが必要不可欠だ。


 


「過去が過去で終わってしまっては意味がありません。過去は、今や明日や未来につながってこそ意味がある。そのような歴史の学び方をしていきましょう」と西山さん。


 


〈苦しみや悲しみからしか生まれてこないものがある。それこそが尊いものである〉これが西山さんの持論だ。奈良時代は、日本の長い歴史のなかでも、最高の〈もの〉が生み出された時代だという。そのような宝物に近づけるのも、この講座の大きな魅力である。


 


やわらかだが説得力のある語り口が定評の西山さん。古代に関心のある人には見逃せない講座だ。


講師プロフィール

帝塚山大学文学部文化創造学科教授 西山 厚 (にしやま・あつし)

1953年徳島県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は日本仏教史。奈良国立博物館学芸部長を経て、2014年4月より帝塚山大学文学部に新設された文化創造学科の教授に就任。奈良国立博物館では「女性と仏教」など数多くの特別展を企画。奈良と仏教をメインテーマに、生きた言葉で語る活動を続けている。主な編著書に『仏教発見!』(講談社現代新書)、『僧侶の書』(至文堂)、『官能仏教』(角川書店)、『東大寺』(平凡社)など。

西山 厚

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