しがぎん経済文化センター

江戸時代の街道・町文化を探訪 講師 水本 邦彦 先生

「絵図や古文書からみえてくる 生き生きとした“村衆”の姿」

滋賀の歴史というと織田信長や豊臣秀吉、あるいは浅井長政などの戦国武将を中心に語られることが多いが、長浜会場で来春から始まる新講座「江戸時代の街道・町文化を探訪」では、江戸時代の近江の町や村で暮らした庶民の姿に焦点を当てる。


 


講師の水本邦彦さんの専門は江戸時代の農村社会史。京都、大阪、滋賀周辺を対象に、かつての庄屋に伝わる古文書などの史料を読み解き、地域の歴史を研究してきた。


 


「信長、秀吉、家康といった政治史よりも、私は当時の〝普通の人〟の暮らしやものの考え方に興味があったんです」と水本さん。


 


古文書を読み込んでいくと、これまでの村が、江戸幕府の支配下で画一的な封建社会だったかのような一般のイメージを覆す、それぞれに違った村の姿が立ち現れてくる。領主が定めた法律とは別に村の〝掟(おきて)〟を独自に決めて、地域の安全管理や農業生産の向上のために柔軟に対応していたという。


 


「事細かに罰金刑を決めている村があれば、丼勘定で掟を決めている村もあるし、他に比べて休日が多い村もある。村ごとに非常に個性的、そこがおもしろい。私は京都や長浜の町衆に対して、江戸時代の百姓を〝村衆〟と呼んでいるのですが、そうした村衆の生き生きとした姿がみえてきます。また、私たち現代人の方が画一化されてしまっていることを発見したりもする。江戸時代の彼らを発見することは現代に生きる私たち自身を発見することでもあると思います」


 


今回の講座では、古文書に加えて街道や村の絵図、洛中洛外図屏風などの絵画史料も参考にして多面的に歴史にアプローチしてきた研究手法を取り入れて、庶民の生活を立体的に解説する予定だ。


 


「歴史はどこかへ流れていってしまったのではなくて、目の前にある風景に埋め込まれている。現在の景色を題材にして、過去の社会を発見することができます」


 


多数の街道と琵琶湖の水上交通で京都や北陸、伊勢など、広く〝外〟と結びついていた近江は技術も文化もレベルが高く、総合的な力が蓄えられていたと水本さんは指摘。「江戸時代の近江のことを研究すると、全国のことがだいたいわかるんですよ。全国レベルの超一級の史料がさりげなくたくさん残っていることにも近江の奥深さを感じます」


 


学校での勉強とは逆に、歴史を現代から過去へとさかのぼっていく考え方もユニークだ。


 


「博物館などの展示は必ず縄文弥生から現代へという順番ですが、逆にみていくとおもしろいんですよ。今の自分につながるところから始めて、知らない過去に向かって近江の歴史を一緒にみていきましょう」


講師プロフィール

京都府立大学・長浜バイオ大学名誉教授 水本 邦彦 (みずもと・くにひこ)

1946年群馬県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都府立大学教授、長浜バイオ大学教授を歴任。古文書や絵図・屏風絵などを題材に、江戸時代の町や村の歴史を研究。主な著書は『近世の村社会と国家』(東京大学出版会)『徳川の国家デザイン』(小学館)『草山の語る近世』(山川出版社)『徳川社会論の視座』(敬文舎)など。

水本 邦彦

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