しがぎん経済文化センター

モンゴル遊牧文化いまむかし 講師 小長谷 有紀 先生

「モンゴルの遊牧文化を通して 自分自身を見直すきっかけに!」

小長谷 有紀

モンゴルと聞いて何を連想するだろうか? 遊牧民族、日本の大相撲で活躍する白鵬や逸ノ城(いちのじょう)、民話「スーホの白い馬」など…。比較的身近な国ではないだけに、憧れも含めた興味を抱いてしまいがちだが「日本に伝わっているモンゴルのイメージは、ほんの断片に過ぎません。逆に日本で育まれたイメージを逆輸入するなど、現代のモンゴルは大きく様変わりしています」と語るのは、人間文化研究機構理事の小長谷(こながや)有紀さん。来春の新講座「モンゴル遊牧文化いまむかし」で、今も変わらない遊牧民の暮らし、さらに知られざる21世紀のモンゴル社会について解説する。


 


小長谷さんが女性として初めてモンゴルに留学したのは1979年。「いつまでモンゴルを研究しているの?と子どもたちに呆れられていますが、いまだに興味が尽きない。永遠に終わらないと思うくらいです」と笑う。外見は日本人とそっくりだが、モンゴル人の生活スタイルや考え方は大きく異なる。そのギャップに驚きつつ、新たな発見から興味を覚える。その繰り返しこそ研究者の醍醐味なのだろう。


 


遊牧と聞くと牧歌的なイメージを抱いてしまいがちだが、小長谷さんは「遊牧はIT産業!」と言い切る。


 


「遊牧は雨が降って草が育った場所に羊を放つので、他の人より先にいい条件の土地を見つけ出すことが大切です。そこでは情報収集力が不可欠となってくる。つまりモンゴルではコンピュータがなかった時代から、IT産業が成立していたのです。情報を収集しながらそれを成果に結びつける、それはある意味では商社や銀行などの業務と似ているかもしれません」


 


個人個人が競い合う社会だけに、適応能力の高さも際立っている。相撲やレスリングなど個人プレーのスポーツ競技における強さも、その背景を知れば納得できるもの。「必ずしもモンゴルを好きにならなくてもいい。ただモンゴルという近くて遠い国を通して、気づくことがあるはずです。私もモンゴル研究を進めていく中で〈和を以て貴しとなす〉とする日本人の美徳を実感しました。新たな視点を持つことは、自分自身を見つめ直すきっかけでもある。講座を通してそんな出会いを見つけてほしいと思っています」


講師プロフィール

大学共同利用機関法人人間文化研究機構理事 小長谷 有紀 (こながや・ゆき)

1957年大阪府生まれ。81年京都大学文学部卒業。86年同大学院文学研究科博士課程満期修了。京都大学助手、国立民族学博物館助手、同教授を経て、2014年より現職。専攻は文化人類学。2013年春の紫綬褒章受章。主な著書に『人類学者は草原に育つ―変貌するモンゴルとともに』(臨川書店)『ウメサオタダオと出会う 文明学者・梅棹忠夫入門』(小学館)など。

小長谷 有紀

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