しがぎん経済文化センター

中国古代史探訪: 春秋時代の国家と社会 講師 吉本道雅 先生

「出土文字資料などから 中国四千年の歴史をたどる。」

 「中国の春秋時代を分かりやすく例えるなら、日本の室町時代のようなものです。周王朝に王がいて、有力諸侯が領域を拡大し、覇者が台頭します。室町時代の天皇、足利将軍、諸大名がいる構図に似ています」という吉本道雅先生は、中国古代史をテーマに秋の文化講座に初登場。斉の桓公や晋の文公ら、春秋時代(前770〜前453年)の覇者にスポットをあてて時代の変遷を学ぶ。

 講座の中には故事成語「管鮑の交わり」「臥薪嘗胆」などにちなんだ副題が付いているものもある。「これらは馴染みのある言葉ですが、現代のような意味で使われるようになったのは後の時代になってから。史書やその概説書に書かれていることは曖昧なところもあるので、原型の資料に遡って考えることが大切です。今回の講座では、史実を知るのに重要な青銅器などの出土文字資料や文献学の手法を使い、覇者の時代である春秋時代を読み解きます」

 青銅器の中には、「管鮑の交わり」にまつわる賢臣・鮑叔牙の子孫が作ったといわれるものも。これらの青銅器を画像で紹介するので、リアリティーをひしひしと感じられるはずだ。

 「歴史を学習するには資料への理解が欠かせません。時代や書いた人物の立場によって伝えたいことは異なりますから、批判的な目で資料を見ることも必要です。資料の内容はもちろん、表現方法にも注意を払います。どのような文字が使われ、どんな風に並んでいるのかを読むことで、その時代性を把握できます」と吉本先生。

 また、春秋時代を学ぶことは現代の中国国家を理解するのにも役立つという。「中国は前221年に秦の始皇帝が天下を統一してから皇帝を頂点とする専制国家が持続し、日本の国家とは形成過程が違います。天下統一前の春秋時代を知ると、専制国家の成り立ちが分かります」

 遥かな時を越えた春秋時代に思いを馳せ、中国古代史への知見を広めてみたい。


講師プロフィール

京都大学大学院文学研究科教授 吉本道雅 (よしもと・みちまさ)

岡山県生まれ。1982年京都大学文学部卒業。1987年同文学研究科博士後期課程単位認定退学。京都大学博士(文学)。京都大学文学部助手、立命館大学文学部助教授、同教授を経て2004年より京都大学文学研究科教授。専攻は東洋史。著書に『中国先秦史の研究』(京都大学学術出版会)、訳書に『周代中国の社会考古学』(同)など。

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